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自閉症「やりとりの困難」

2024.07.07

こんにちは!
児童発達支援・放課後等デイサービス ヒトツナ フランチャイズ本部の遠藤です。

今日は、自閉症の「やりとりの困難」についてお話です。

自閉症とは

自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準

A 社会的コミュニケーション及び相互関係における持続的障害
B 限定された反復する様式の行動、興味、活動
C 症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
D 症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

社会的コミュニケーション及び相互関係における持続的障害とは

1.社会的・情緒的な相互関係の障害。
2.他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害。
3.年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。

自閉症(ASD)はアイコンタクトの困難さから共同注意(指差し)の遅れ、そこから三項関係の成立や、言葉の獲得など、コミュニケーションに必要な言語の獲得や、発話者の意図を組むための機能の発達に遅れが生じます。

・目が合いづらい
乳幼児期の発達段階に、身近な養育者と目を合わせたり、目線や、指さす方向を追いかけ、事象を共有することで言葉や共感性が育っていきます。自閉症児は、目を合わせるということに負担を感じやすく、目を合わせるという経験自体が少ないことから、社会性全体の発達の遅れにつながっていると考えられています。

・共同注意の遅れ
目線の先や、指をさした方向を共に見ることを「共同注意」といいます。
自閉症児は、自発的な共同注意(指をさした方向を見て!と主張すること)はできても、反対に、相手からの指さしに対して反応することに困難さがあります。
共同注意は、言葉の発達に必要なプロセスの一つです。

・三項関係成立の遅れ
共同注意ができるようになると、自分・相手・物という、3つの関係ができあがります。
それにより、「これは、“りんご”というものなんだ」と物の名前を知ったり、相手がその物に対してどんな感じ方をしているのかを知る機会が増えていきます。
このようにして次第に、人は、自分と違う感じ方を持っていると理解していきます。

・言語理解の遅れ
共同注意、三項関係の成立により言語を形成していくプロセスにつまずきがあることから、言語の意味的理解の遅れが生じることがあります。

・心の理論の困難
「人は、自分とは違う感じ方を持っている」という感覚を持つことを、心の理論といいます。心の理論は、他者の好み、思想、信念、様々に、他者の心に寄り添ってわかろうとするはたらきです。

・発話意図理解の困難
ここまでの自閉症児のやりとりの困難さの背景にある要素を積み重ねていくと見えてくる課題の一つとして、発話意図理解の困難さがあります。
語用論ともいう「言葉の意図」は、必ずしも、発している言語そのものの意味と結びつくわけではなく、状況、相手の心情、様々な背景を想像することで「もしかしてこういう風に言いたかったのかな」と察しながらコミュニケーションをはかっていきます。
自閉症児は、目を合わせることの少なさや、そもそも言語の意味的理解の遅れがあったり、意味を理解していても認知(受け取り方)の癖などから誤解して受け取ったり、心の理論の困難さ等様々な要素が合わさって、「相手が意図していること」を汲み取ることが難しいと考えられています。

・他者理解、自己理解の遅れ
他者理解とは、自己理解であるといっても過言ではないくらい密接です。
なぜなら、人は他者とのかかわりの中で、自己に対する反応をフィードバック情報として取り入れ、行動に反映させていくことができるからです。
一方で自閉症児は、特性から、発話意図を汲み取れず言われていることを誤解する、一つの面からの見方にとらわれ視点の切り替えが難しい、想像力で行動を補うことが難しい、「どうしていいか分からない」という状況が多くなる、という、対人に対して強いストレスを感じる要素が多くなっているため、次第に対人そのものを避けるようになる傾向があります。
そうすると、自己に対するフィードバックを受ける機会も減少し、結果的に自己理解が難しくなり、それがますます他者とのかかわりの不器用さに繋がっていくという事が起こるのです。

限定された反復する様式の行動、興味、活動

1.常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
2.同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
3.集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
4.感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。

コミュニケーション(やりとり)の困難さや、その背景にある想像的活動の困難さ等も関係し、自閉症児は「いつもと同じ」に対する安心感を求める傾向があります。

その他にも、体の感覚の特性により、感覚刺激を求めたり、逆に避けたりという行動がこだわりとして見られることがあります。
詳しくは自閉症の常同行動に関する記事をご覧ください。

自閉症を理解する上で大切なこと

理解する上で大切なこととしては、様々な特性が重なり合って、結果対人関係の困りに繋がっているだけということを忘れないことだと考えます。

自閉症はコミュニケーションが下手という印象を持たれると思いますが、様々な特性が重なり合い、また、経験や環境によっても増強され、「本人も困っている」ということです。

脳の先天的な機能障害という面だけでなく、置かれている環境や、経験してきたことによって作られている認知によっても、自閉症の苦悩は大きくなっていきます。

発達障害は本人の本質を見えにくくする鎧のようなもの「コミュニケーションが苦手」という表面化した部分に働きかけるだけではなく

「なぜ」に着目して、それは「どうして」と深く掘り下げていくことが大切です。