児童発達支援・放課後等デイサービス ヒトツナ フランチャイズ本部の遠藤です。
この記事では、「発達障害」や「発達支援」に関わる支援者たちが、発達障害について学ぼうとするとき、最初に知ってほしい内容です。
発達障害かも?と思ったとき
関わっている子どもが「発達に遅れがある?」、「発達障害かも」と思ったとき、きっと、自閉症の特性や、ADHDの特性などを調べようとするのではないでしょうか。
発達障害への理解を深めることは、発達障害の特徴的な行動様式もありますので、その無理解による子どもへの過剰な注意・叱責を防ぐためにも必要なことですが、そもそも子どもがどう育っていくかを知らずに発達障害のことだけを学ぼうとすることは、支援が不十分になる可能性があります。
発達の原則を知る
❶発達は順序性と方向性がある
❷発達は速度の多様性がある
❸発達は敏感期(決定的に重要な時期)がある
❹発達は環境との相互作用によって促される
身体発達も学習面も同様に子どもの発達には順序があります。
また、その進む速度は多様性があり、一人ひとりのペースで段階を進んでいくことが大切だといわれています。
子どもの現在地を知ること
大人が子どもに求める「○○が出来てほしい」という願いは、子どもの現在地から見てハードルが高すぎる場合があります。子どもは皆、0歳から始まります。突然大きくは生まれてきません。皆が0歳から育っていくのです。その過程の歩み方も個人差があり、なおかつ順序もあり、はじめから大人が思う“適切行動”ができるとは限らないのです。子どもの発達支援は、「今日のその子」を理解することからはじまります。
個の素因と環境との相互作用によっても育ちが変わる
発達心理学では、遺伝説と環境説それぞれを提唱した人物がいました。
〇遺伝説
アメリカの心理学者ゲゼルが、双子の赤ちゃんに階段上りの実験を行った研究の記録があります。一人の赤ちゃんには生後46週から毎日階段を上らせもう一人の赤ちゃんには生後53週まで階段に上らせることはしませんでした。ところが、あとから階段上りをはじめた赤ちゃんの方が最終的に早く階段に登れるようになったという結果があります。このことからゲゼルは「時期がくれば遺伝的に成熟する」逆にこの遺伝的な成熟の準備がなければ発達は成し遂げられないと結論づけます。これを、遺伝説といいます。昔は「遺伝説が正しい」と考えられていた時代があったのです。
〇環境説
遺伝説に対してアメリカの行動主義心理学の創始者ワトソンは「環境の中での経験こそ、新しい行動を形成する」と主張します。どんな子どもも同じ環境さえ与えれば100%、学習によって行動を身に着けられるという考え方です。遺伝説の意見を覆し環境要因の影響を強調しています。
その他にも発達心理学に関わる偉人たちは様々に研究してきましたが、今現在、有力とされている考え方は環境と遺伝の相互作用説です。遺伝的なものが時間とともに現れる事と環境の中で経験を通して得る事との相互作用によって人間は発達するという考えです。
発達は環境によって学びが促され、環境によって子どもの興味を引き、自発的な行動を誘うといわれています。“やってみたい”と思うキッカケや、それを自主的に動ける環境づくりを一人ひとりの成長の個人差に合わせて設定してあげることが、発達を促す環境に繋がります。
一人ひとりのペースで段階を経ていくこと
子どもの発達の最近接領域の観点でも、出来ないことの克服やしつけに性急になりすぎると、子どもの自身や意欲の低下を引き起こす恐れがあると考えられています。まずは一人ひとりのペースでの育ちの現在地を知ることから始めましょう。
困った行動も、発達過程における好ましい変化の場合がある
例えば、感覚運動期の子ども(概ね2歳頃まで)は、物を投げたり壊したりすることで物の変化を楽しみながら学んだり、自分の体を動かすことが探索遊びになっていたり、繰り返し同じ動作を行ったり、周りの大人から見ると「困った」と感じる行動を示すことがほとんどですが、これも発達過程で見ると大切な時期になります。いわゆるイヤイヤ期も同様で、しっかり主張することを経験し、主張を押し返される経験や認めてもらった経験などを積み重ねて、次の段階へと向かうのです。経験するべきときに経験できないと、次の発達段階に課題を引き継いでしまうと考えられています。一見困った行動も、発達過程において意味のある行動かもしれない、と思って観察することも大切です。
まとめ
発達はそれぞれが関連し、連続しています。ある日突然できるようになったように見えて、「できるようになるための心身の準備」を日々行っています。子どもの育ちを知ることは、発達障害の特性を理解するのと同じか、あるいはそれ以上に重要と言っても過言ではないほどなので、発達の原則を知るところから始めましょう。