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【臨床心理士がやさしく解説】第2回「模倣と退行」

2024.08.19

こんにちは、発達支援Laboランプの臨床心理士D先生です。

群馬県太田市の児童発達支援・放課後等デイサービスで、臨床心理士として支援にあたっています。これから、発達支援ポータルヒトツナで、療育支援に関連するテーマについて、理論的な背景と合わせて発信していきます。

今回のテーマは「模倣と退行」です。

私たちは日々、新しいことを学び、困難に直面します。

子どもにとっては、日々本当に多くのことが新しいことであることが想像できますよね。ご自身の体験を振り返ってみるのも良いかと思います。

日々新しいことを学んでいく過程で重要な役割を果たすのが「模倣」と「退行」です。この2つの現象は、子どもたち、延いては私たちの成長と精神的な安定に密接に関わっています。

模倣とは

「模倣」とは、他者の行動や習慣、文化を再現する行為を差します。例えば、子どもが赤ちゃん人形用のベビーカーを押す行動は、大人の行動を「模倣」している典型的な例です。この行動を通じて、子どもは親の育児方法を目で、肌で、頭で学ぶことで、社会的役割や責任感を体験していきます。

模倣を通じて、私たちは新しいスキルや知識を効率的に習得することができます。これは、文化の継承にも重要な役割を果たし、伝統や価値観が次世代に引き継がれていく方法でもあります。

模倣には、多くの利点があります。例えば、効率的な学習や社会的適応が挙げられます。しかし、模倣にはオリジナリティの欠如という課題も存在します。対象を選ぶ際には注意が必要です。

退行とは

一方、退行はストレスや困難な状況に対して、より幼い行動や考え方に戻る現象です。例えば、子どもが赤ちゃん人形用のベビーカーに乗る、乗ろうとする行動は、退行の一例です。この行動を通じて、子どもは更に幼い頃の安心感を再体験し、ストレスを軽減します。

退行は、新しい環境や困難な状況での心の防御機能として働き、精神的な安定をもたらします。退行には、一時的な安心感やストレス解消という利点がありますが、現実逃避の危険も伴うものです。長期的な解決策にはなりにくいことも課題となります。

模倣と退行のバランス

模倣と退行は、成長と安定のダイナミズムを形成します。新しいスキルを模倣で学び、困難な時には退行で安心感を得ることが重要です。このバランスが、子ども達、延いては私たちの生活を豊かにします。

教育現場等でも、模倣を用いた効果的な学習方法が活用されています。また、メンタルヘルスの分野では、退行を用いたストレス管理が有効です。

模倣と退行は、人間の成長と精神的な安定、健康に不可欠な要素です。その理解と適切な活用が、より豊かな人生、成長を築くための鍵になります。模倣と退行を通じて、私たちは新たなスキルを学び、心の平穏を保つことができるのです。

保護者の中には、子どもが赤ちゃん人形用のベビーカーに乗るような退行行動を見て不安になる方もいるかもしれません。しかしこの行動は一時的なものであり、子どもがストレスや不安を感じ、まさに成長しているときの自然な反応です。大切なのは、その行動を通じて子どもが安心感を取り戻し、再び前向きに成長できるようにサポートをすることです。

子どもの成長は、直線的なものではありません。時には後退するように見えることがあるかもしれませんが、それは新しい環境や挑戦に適応するための自然な過程です。お子さんが安心できるよう寄り添い、見守ってあげてください。

発達支援Laboランプとは

児童発達支援・放課後等デイサービスの多機能型事業所です。

◆心理士による専門的なアセスメントや介入
子どもの行動の背景にある動機を丁寧に観察し、より適切な行動につなげるためのアセスメントや、行動への支援を行います。

◆五感を全力で使った多彩な体験
事業所にある砂場や、水、土、草木、風など自然の中で子ども達の興味を広げ、豊かな情操を養います。

◆自然なやり取りの中でのソーシャルスキルの習得
小集団の活動の中での、子ども同士、また大人も含めた環境の中で自然なやりとりを経験します。

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