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【ヒトツナの療育】支援をする上で大切な対人援助7原則とは

2024.09.03

児童発達支援・放課後等デイサービス ヒトツナ フランチャイズ本部 SV酒井です!

普段は直営教室でのマネージャー業に加え、グループ全体の研修、運営支援にあたっております。

この記事で分かること

ヒトツナグループSVを務める酒井の記事では、ヒトツナが大切にしている療育方針やそのもととなる理論についてご紹介いたします。

今日は「対人援助7原則」についてお話しいたします。

対人援助7原則とは

発達支援の仕事は、支援を必要とするお子様・保護者様の困りごと=「ニーズ」を解決することが役目です。その解決にあたり、支援者はお子様・保護者様がその解決の過程に前向きな気持ちをもって発達支援に参加していけるような環境を作ることが欠かせません。

アメリカの社会福祉学者F.バイスティックは、その支援者と利用者との関係性を「援助関係」として、以下のように定義しました。

ケースワーカーとクライエントのあいだで生まれる、態度と情緒による力動関係である。
そして、この援助関係は、クライエントが彼と環境のあいだにより良い適応を実現してゆく過程を援助する目的をもっている。
引用:ケースワークの原則 誠信書房 P17より

バイスティックはこの援助関係の中で、より良い支援・ケースワークを行うために支援者が持つべき態度を7つの原則として表しました。
有名な「バイスティックの7原則」です。
私たちヒトツナも、この原則を行動規範として研修にも必ず位置づけ、日々の支援を展開しています。
この7つの原則に基づいて、ぜひ日々の実践を振り返ってみてください。

①個別化の原則

利用者をかけがえのない「個人」として捉えようという原則です。
単なるケースの一つ、ではなく、「そのひとり」に向き合うことで、初めてその個人が抱える真のニーズにアプローチをすることができるのです。
職歴が長くなり、多くの事例を経験すればするほど、「ADHDのケース」「自閉症のケース」と、ケースを「分類」してしまいやすくなり、この原則を見失うことがあります。それ自体は経験者ゆえのスキルであり、決して否定されるべきものではありませんが、改めて「個人」と向き合うことを意識し、その子が持つ本当のニーズや課題を見逃さないという意識を高めていきましょう。

②意図的な感情表現の原則

利用者が表すどんな感情も認めよう、そしてそれに対して意図的な対応をしようという原則です。
プラスの感情もマイナスの感情も、すべて出し切ることで、心の枷を外して自身の問題に向き合い自分の状況を客観視できるようになり、結果的に課題解決に結びつきやすくなります。
ただしこれは、「ただただ感情を外に出せばいい、それを奨励し容認すればいい」というだけのものではありません。当然、感情を爆発させて、他者に危害を加えてしまうことはいけないことです。だからこそ「意図的な」という点がポイントで、あくまでも援助関係のなかで、適切なタイミングで適切な仕方での表出を手伝ってあげる必要があります。そのためには、私たち支援者の「自分自身のコントロール」が不可欠です。それを表しているのが、次の原則です。

③統制された情緒関与の原則

支援者自身が自分の感情に自覚的になり、どんなときにも意図を持った対応ができるよう自分自身を統制しようという原則です。
利用者の感情に飲み込まれてしまうことなく、援助関係を全うするためには、プロとしての自分自身のコントロールが必要です。
支援者自身が、「自分はどんな時に心が揺さぶられてしまうのか」など、自分を客観的に理解するための自己理解を進めていきましょう。そして、利用者がどんな感情表出をしても、意図を持った冷静な対応ができるようにします。
自分だけでこのプロセスを行うことは難しかったりもするので、定期的なスーパーバイズを受けるなどして、「支援者としての自分に向き合う時間」も大切にしていけると良いですね。

④受容の原則

利用者をあるがままに受け止めようという原則です。
こちらも「利用者の逸脱した態度や行動をすべて許容・容認する」ということではなく、ありのままの現実をまず受け止め、「なぜその行動をするのか」「なぜその考え方に至ったのか」を吟味し、そこに隠された利用者の真のニーズに近づいていくことが重要です。
「つまり、受け止めるべき対象は、「好ましいもの」(the good)などの価値ではなく、「真なるもの」(the real)であり、ありのままの現実である。(ケースワークの原則 p113-114)」 とバイスティックも言っている通り、まずありのまま現実を認識し受容することから、利用者の最善の利益を考えていくことが重要です。

⑤非審判的態度の原則

利用者の行動について、善悪を一方的に判断するのはやめようという原則です。
人は「裁かれる」「評価される」と考えると、自分の感じていることを自由に表現することに抵抗を感じます。その状況では、ありのままの利用者を受容することが出来なくなり、結果的に問題解決から遠ざかります。
利用者は、たとえ子どもであっても、自分の人生を生きる主体であり、自分の価値観に基づいて行動を判断していきたいというニーズを持っています。
私たちが行うのは行動のジャッジではなく、「なぜ」を利用者と一緒に深堀り、一緒に解決に向かっていくことです。
利用者が良くない行動をした時も、その時のその子の気持ちに寄り添い、解決策を一緒に考えていく姿勢を大切にしましょう。

⑥自己決定の原則

行動を決めるのは利用者自身であるという原則です。
⾃分の⼈⽣に対する選択や決定を⾃ら⾏いたいというニーズを誰もが持っており、⼈は選択と決定を⾃由に⾏使できるときに社会的責任を持ち、情緒的に適応しながら成⻑、発達していきます。「⾃⼰決定・選択」は⼈が健やかに発達していく上で重要な相互作⽤を持つものだと考えられています。
たとえ子どもであっても、たとえどんなに拙い価値観に見えても、自分自身の意思をもった1人の権利主体として、「子どもの意見を確かめる」こと。
それこそが「子どもの最善の利益」の追求に繋がっていく姿勢だと考えています。
障害の程度が重く発語がないなどのお子様でも、同様に自分の意思が表明できるように、代替コミュニケーションツールなどを用いて意思表出のサポートを行う支援が必要です。

⑦秘密保持の原則

利用者のプライバシーを守り、利用者に関する情報を許可なく外部に漏らさないという原則です。
職務上の「守秘義務」という側面ももちろんありますが、そもそも「かけがえのない個人である1人の利用者様が、信頼関係の中で話をしてくれた」という事実を考えれば、プライバシーの侵害は権利侵害にあたることは自明ですね。

いかがだったでしょうか。
バイスティックの原則は、他者と関わるこの職種の重要な土台となるマインドです。
私たちヒトツナは、支援を行う上で、小手先の知識やスキルだけではなく「他者と関わるとはどういうことか」「他者を尊重するとはどういうことか」「子どもの最善の利益とは何か」…といった「マインド」の部分をとても大切にしています。
その土台がなければ、「子どもにとっての」本当にベストな支援は生まれないと考えているからです。

「子どもの最善の利益」を追求するための「自分たちの在り方」を、ぜひ改めて見直して、良い支援を届けていきましょう!