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売上のためじゃない!より細やかな支援が必要な子へ「専門的支援」実施のすすめ

2025.10.04

令和6年度改正により新たに新設された「専門的支援実施加算」についてご存じでしょうか。

この加算は、理学療法士等の専門職による、専門性を活かした特定領域に対するアセスメントの結果、個別支援計画とは別に立案された専門的支援実施計画に基づき取り組まれるもので、その支援に対してリソースを投じるべく「加算」という制度として、制定されています。

専門的支援実施に限らず、児童発達支援・放課後等デイサービスにはいくつかの加算制度がありますが、加算はただ売上や収益を増やすためのものではなく、より細やかで専門性の高い支援を必要とする子どもたちに、適切なリソースを届けるための仕組みです。

今日は、専門的支援実施加算の正しい理解と、そもそも「専門的支援」の必要性についてお話したいと思います。

まずは対象となる専門職員(令和6年度改定)

令和6年度報酬改定では、次の職種が対象として明記されています。

  • 理学療法士(PT)
  • 作業療法士(OT)
  • 言語聴覚士(ST)
  • 心理指導担当職員
  • 児童福祉事業における実務経験が5年以上ある保育士
  • 任用から2年以上かつ児童福祉事業における実務経験が5年以上ある児童指導員

◆そのほか、必要となる条件
・児童発達支援管理責任者として配置されている場合は実施不可
・基準人員、加配加配人員、専門的支援体制加算人員が行うことは可能
・児童発達支援管理責任者が欠如している場合は算定不可

出典(引用)

「発達支援の5領域の特定の分野に関する専門的な知見を有する職員(公認心理師、臨床心理士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、障害児支援の実務経験が5年以上ある保育士または児童指導員)を配置し、支援に関与させた場合に算定できる。」
出典:厚生労働省「障害児通所支援に係る報酬算定構造(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定)」

支援を提供する専門職が専門的支援実施計画を障害児ごとに作成する

◆その際必要となる条件
・当該専門職によるアセスメントの結果
・5領域との関係の中で、特に支援を要する領域
・専門的な支援を行うことで、目指すべき達成目標
・目標を達成するために行う具体的な支援の内容
・支援の実施方法

個別支援計画本体としては5領域を網羅して作成される必要があり、専門的支援実施計画とはその中でも、専門職がその専門性を活かして特に支援を要する領域についてのアセスメントを行い、展開されるものになります。

例えば、アイコンタクトや追視が苦手な自閉症のお子さんがいた場合、個別支援計画の中ではその部分に限定的に支援を行う目標を立てるのではなく、そのお子さんの健康生活、運動感覚、認知行動、言語コミュニケーション、人間関係社会性すべての関連を目標として検討していくのに対し、専門的支援実施計画においては、中でも「アイコンタクト」や「追視」を一つの目標だとした場合に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等、それぞれの立場から見てより細やかな支援(プログラム)ができるよう、観察・評価を重ね、計画を立てていきます。

専門的支援実施加算の算定に向けて

アセスメント
個別支援計画を踏まえ、更に専門的な支援を要する特定の領域に対し専門職によるアセスメントを実施する。

計画書の作成
専門的支援実施計画書を作成し、保護者の同意を得る。

実施方法
個別での実施を基本としつつ、個々のニーズを踏まえた支援を確保した上で、小集団(5名以下)又は理学療法士等の専門職とは別の職員を配置した上で、小集団の組み合わせ(2組)までは可能。

支援時間
専門的支援の提供時間は、同日における当該障害児に対する支援時 間の全てとする必要はないが、少なくとも30分以上を確保すること。

専門的支援の必要性

個別支援計画の策定段階で既に必要な考えであるとは思いますが、「困っている」と周りの大人が感じるこどもの行動の多くは、実は身体の機能、使い方の面から生じているものであったり、それらを理解してもらえない環境に長く身を置いたことでこどもの自己肯定感が低下し、行動障害化したものであったりすることがあり、「本来のその子の姿ではない」状態で、起こっている場合があります。

誤解されたまま積み重なっていく失敗体験叱責体験劣等感無力感・・・
それらが、学校や園、ご家庭での「困った行動」として表面化しているのです。

つまり、私たち支援者がすべきことというのは、「困った行動を減らすこと」、「やめさせること」、「平和に学校や園で生活できるように抑え込む練習をさせること」ではないのです。

その子はなぜ、そんなに苦しんでしょう。
硬い殻をかぶって、心の中では何を思っているでしょう。

それを紐解き、殻をやぶり、本来の「その子らしさ」が十分に発揮できるように支援していくのが、児童発達支援・放課後等デイサービスの役割だと考えております。

その中で専門的支援は、本来既に行われるべきではありますが、より具体的に、より踏み込んだ支援をするための制度的な後押しだと考えます。

こどもたちの成長には、一人の力だけじゃなく、いろんな専門性が集まることが必要です。
専門的支援実施加算は、その“つながり”を形にしたもの。

私たちが制度を正しく理解し、日々の現場で活かしていけるかどうかが、子どもたちの未来につながっていきます。

専門職からの事業所づくり ― 加算を味方にした支援の質向上

「今の事業所では自分の思いとスキルを活かしきれていない」
「専門的支援の必要性を理解してもらえない」
「同じ目線で話せる仲間が欲しい」

だけど・・・
「自分は現場しか知らないから経営は不安…」そう感じる専門職の方も少なくありません。
ですが、専門職として積み重ねた経験こそが事業所の大きな武器です。
そこに制度理解と経営の知恵を組み合わせれば、専門性と持続性を兼ね備えた事業所づくりが実現します。

子どもたちにとって安心できる居場所を、専門職の力から広げていく。
それが「専門職からの事業所づくり」の最大の価値です。

子どものために培ってきた専門性を、事業所づくりに活かす一歩を踏み出してみませんか。
一人で悩む必要はありません。経験と制度をどう形にしていくか、一緒に考えましょう。
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