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【臨床心理士がやさしく解説】第9回「療育的関わりにおける質の高さに係る一考」

2024.10.08

こんにちは、発達支援Laboランプです。
ここでは、定期的に療育支援に関連するテーマについて、理論的な背景と合わせて発信をしています。

今回のテーマは「療育的関わりにおける質の高さに係る一考」です。

療育支援は、発達障害や学習障害、情緒障害を持つ子どもたちの発達を促進するためのサポートです。
質の高い療育支援を実現するためには、個別化されたアプローチ、科学的根拠に基づく方法、包括的なサポート体制、温かく支持的な関係、継続的な専門性の向上、そして家族との協力等多くの基盤が重要です。

今回は「質の高い療育」について、「声掛け」、「自主性」、「リスクマネジメント」という3つの観点から具体的な場面を交えて探っていきます。

1,適切な声掛け

子どもたちが自分に自信を持ち、前向きな態度で取り組むためには、ポジティブな声掛けが重要です。
「よく頑張ったね!」や、「あなたのアイディア、素晴らしいね!」等、努力や成功を具体的に褒めることで、自己肯定感を育むことができます。
また、失敗や間違いに対しても肯定的なフィードバックを行い、改善に向けて励ますことが大切です。これにより、子どもたちが恐れずに挑戦を続けることができるようにします。
加えて、子どもたちが迷わず行動できるように、明確で具体的な指示を行います。簡単な言葉で説明し、必要に応じて視覚的な補助(絵、スケジュール表等)を用いることも有効です。

2,自主性の尊重

自主性を育むためには、選択の機会を提供することが大切です。子どもたちに選択肢を提示し、自分で選ぶことで、責任感や決断力も身につけることができます。
また、本人のペースで取り組ませることも重要です。過度にプレッシャーを与え過ぎず、必要に応じてサポートしながらも、自分で考え行動する機会を尊重します。小さな成功体験を積み重ねることで、自信を持って挑戦する姿勢を育みます。難易度は徐々に、段階的に上げ、達成感を味わわせることが肝要です。

3,子どものリスクマネジメントの観点

子どもたちが安心して活動できるよう、安全な環境を整えることがもちろん基本となります。今のその子たちにとって危険な物や状況は避け、適切な見守り環境の下で活動を行います。
そのうえで、子どもたちにリスクを理解させることも重要です。なぜ危険なのか、どのようにすれば安全なのかを具体的に説明し、自ら考え行動できるようにします。しかし、過度にリスクを避けるのではなく、適度な挑戦を促すことも必要です。挑戦を通じて成長する機会を提供し、成功までの試行錯誤を通して学ぶことができるようにします。

これらのアプローチを通じて、子どもたちが安心して成長できる環境を提供することが、質の高い療育支援の基盤となるかと思います。子どもたちの声に耳を傾け、適宜支援を提供することで、子どもたちの可能性を最大限に引き出していくことができます。

療育支援の現場では、実際にどのように子どもたちと関わるかが非常に重要です。具体的な例をいくつか挙げ、考えていきます。

具体例①『子どもが遊んだ後におもちゃを片付ける場面』

「適切な声掛け」

 「このおもちゃをここに片付けてください」など、明確な指示を伝えます。この時、大切なことは、保護者や周囲の大人が「発信する」ことではありません。子どもが「受信する」ことです。指差しや絵カード等の視覚的補助を用いるのも有効です。

「自主性の尊重」

 子どもが自分で片付けるタイミングを決められるようにします。いわば我慢比べの場面です。ここで気を付けることは、時間の制限等、さまざまな要因により子どもが片付けを行う前に、大人が片付けてしまい「親や周囲の大人がやるまで待つ」と子どもが考えてしまうことです。「準備ができたら始めようね」等と伝え、根気よく待つことが肝要です。

「成功体験の積み重ね」

 片付け(に取り組むこと)ができたら褒めます。この場面で気を付けることは、子どもにとって、この「親や周囲の大人が褒めること」が嬉しいことでなければなりません。発達の段階によっては、好きなお菓子や食べ物、遊び等を報酬として設定することも考慮します。

具体例②『読み聞かせ等における絵本の選択』

「自主性の尊重」

 「どの本を読みたい?」等、読む本を子どもが決められるようにします。「この本を読んでほしいな…」という周囲の大人の思いももちろん大切ですが、自主性の観点からは、子どもの選択が重要です。そんな時は「どっちの本が読みたい?」等の選択肢の提示も考えられますね。

「適切な声掛け」

 「良い本を選んだね!」等、子どもが選んだ本を褒めます。日々繰り返す中で「僕(私)は良い本を選ぶことができる!」と自信が付けば完璧ではないでしょうか。

「成功体験の積み重ね」

 読み終わった後に感想を聞き、その上で褒めます。この場面では、内容や展開が本の中身と子どもの表現で違ったとしても、その点はあまり気にしないことが肝要かと思います。

具体例③『高い遊具:新しい遊びへの挑戦』

「自主性の尊重」

 適度な挑戦を促します。「少し難しいかもしれないけど、挑戦してみよう。もし困ったらサポートするよ」と伝えます。

「子どものリスクマネジメントの観点」

 「高いところに登るときは気をつけてね。もし落ちたらケガをするかもしれないからね。」等と伝え、リスクの理解を促します。無理をする必要はありません。

「適切な声掛け」

 挑戦する(した)姿勢を褒め、試行錯誤したことを肯定します。その時の成功・失敗はあまり関係ありません。大切なのは、「試してみて、次にそれをより改善に向かうこと」です。

日々の具体的なかかわり方を通じて、子どもたちが安心して成長できる環境を整えることが、質の高い支援を目指していくための基盤となると考えます。これにより、子どもたちの自己肯定感を高め、持続的な成長が期待できるのではないでしょうか。

発達支援Laboランプとは

児童発達支援・放課後等デイサービスの多機能型事業所です。

◆心理士による専門的なアセスメントや介入
子どもの行動の背景にある動機を丁寧に観察し、より適切な行動につなげるためのアセスメントや、行動への支援を行います。

◆五感を全力で使った多彩な体験
事業所にある砂場や、水、土、草木、風など自然の中で子ども達の興味を広げ、豊かな情操を養います。

◆自然なやり取りの中でのソーシャルスキルの習得
小集団の活動の中での、子ども同士、また大人も含めた環境の中で自然なやりとりを経験します。

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